次の人へ渡せる庭。中古住宅と庭時間
2026/09/23
中古住宅を見るとき、建物の築年数や間取り、設備、断熱性能などは気になります。
では、その家にある庭はどうでしょうか。
古いから撤去する。
手入れが大変そうだから全部なくす。
更地のようにして、新しくつくり直す。
それも一つの方法です。
でも、少しだけ立ち止まって考えてみたいことがあります。
その庭には、今からではつくれないものが残っていないでしょうか。
何十年もかけて育った木。
昔の人が選んだ石。
家から庭へ続くアプローチ。
木陰のできる場所。
風の抜ける方向。
庭を眺めるためにつくられた縁側。
そこには、施工した瞬間には存在しない「積み重なり」があります。
中古住宅の庭には、新築外構とは違う価値があるのです。
古い庭=価値がない、ではない
外構工事の現場では、古い庭を見せていただくことがあります。
伸びすぎた植木。
使わなくなった花壇。
古くなったフェンス。
雑然とした物置。
苔のついた庭石。
一見すると、「全部やり直したほうが早い」と思うこともあります。
でも、よく見ると、
「この木は残したほうがいい」
「この場所は昔から庭の居場所だったのではないか」
「この石は今ではなかなか手に入らない」
「この木陰は、新しく植えても何十年もかかる」
というものが見つかることがあります。
庭は、単純に新しいものと古いものだけでは判断できません。
古いから価値がないのではなく、古いからこそ残っている価値もある。
ここは、中古住宅の庭を考える上で大切な視点だと思います。
20年育った木は、20年かけないとつくれない
例えば一本の木。
新しい庭に3mの樹木を植えることはできます。
でも、その木が20年、30年かけてつくった樹形や木陰を、工事費だけで一気につくることはできません。
もちろん、樹木は成長するものです。
剪定も必要です。
将来的に大きくなりすぎれば、整理することもあります。
それでも、長い年月をかけて育った木には、新しく植えた木とは違う存在感があります。
だから中古住宅の庭を見るときには、
「この木は残せるか?」
という問いを持ってみる。
全部残す必要はありません。
一本だけでもいい。
その一本が、新しい庭の中心になることもあります。
庭を引き継ぐとは、庭をそのまま保存することではありません。
残す価値のあるものを見つけ、次の暮らしの中でも使える形にすることです。
庭石にも、庭の記憶がある
庭木だけではありません。
昔の庭には、大きな庭石が置かれていることがあります。
現在では、同じ大きさの石を新たに搬入し、据え付けるだけでも、それなりの手間がかかります。
でも、その石が新しい暮らしに必要とは限りません。
だからといって、すぐに撤去する必要もありません。
場所を変える。
植栽の背景にする。
ベンチの横に置く。
景石として使う。
あるいは、庭の構成を変えるために一部だけ撤去する。
残すか、壊すかの二択ではなく、「使い方を変える」という選択肢があります。
これは庭のリフォームでも同じです。
「残す」と「古いまま」は違う
ここは少し重要です。
庭の価値を残すと言っても、何でも残せばいいわけではありません。
壊れたブロック塀。
安全性に問題がある構造物。
根が建物や配管に影響している樹木。
水がうまく流れない場所。
使いにくくなった段差。
老朽化した設備。
こうしたものは、必要に応じて直したり、撤去したりする必要があります。
「昔からあるから残す」のではありません。
次の暮らしにとって意味があるものを残す。
この判断が大切です。
だからこそ、中古住宅の庭では「全部残す」「全部壊す」の二択ではなく、
残す・直す・移す・減らす・足す
という編集が必要になります。
次に住む人の庭にする
中古住宅の庭で難しいのは、今までの住人と次の住人では、庭の使い方が違うことです。
前の家族は家庭菜園をしていた。
次の家族は子どもと遊びたい。
前の家族は植木を眺めるのが好きだった。
次の家族は手入れをあまりしたくない。
前の家族は車1台。
次の家族は車2台。
前の家族には必要だった物置が、次の家族には不要かもしれない。
だから、
「元の庭を復元する」ことが正解とは限りません。
その庭が持っていた良さを残しながら、新しい住人の暮らしに合わせて変える。
これが「庭の承継」なのだと思います。
庭は、家より長く残ることもある
建物は建て替えられます。
外壁も塗り替えられます。
設備も交換されます。
間取りも変えられます。
一方で、庭には建物とは違う時間の積み重なりがあります。
一本の木が残る。
石が残る。
アプローチが残る。
塀の位置が残る。
庭の高低差が残る。
そして、それらが次の住人の暮らしの中に組み込まれていく。
そう考えると、庭は単なる「家の外側」ではありません。
住人が変わっても、場所に残り続けるものの一つなのです。
もちろん、すべての庭が残る必要はありません。
その土地に合わなくなれば、整理することも必要です。
でも、残せるものまで全部なくしてしまう前に、
「これは次の人にも使えるのでは?」
と考えてみる。
その視点があるだけで、中古住宅の庭の見え方は変わってきます。
新築だけが庭づくりではない
庭づくりというと、新築住宅を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、これからは中古住宅と庭の関係も、もっと重要になってくると思います。
古い家を買う。
庭を整理する。
必要なところだけ直す。
残せる木を残す。
駐車場を今の車に合わせる。
子どもが遊べる場所をつくる。
犬を迎えられる庭にする。
照明を追加する。
目隠しをつくる。
そうやって、前の住人が残したものを新しい暮らしに合わせて編集していく。
これは、新築でゼロから庭をつくるのとは違う面白さがあります。
ゼロからつくるのではなく、あるものから始める。
それも庭づくりです。
「受け継ぐ」は、そのまま残すことではない
文化でも、建物でも、道具でも、
「受け継ぐ」という言葉があります。
でも、受け継ぐことは、昔の状態をそのまま保存することとは限りません。
使い方を変える。
場所を変える。
必要なものを残す。
不要なものを整理する。
そして、自分たちの暮らしに合わせる。
庭も同じではないでしょうか。
祖父母の庭を、そのまま再現する必要はない。
親が大切にしていた庭を、そのまま維持できなくてもいい。
ただ、
「全部なくしてしまう前に、何が残せるのかを考える。」
それだけでも、庭との向き合い方は変わります。
土地を渡すとき、庭も一緒に渡っていく
家を売る。
土地を売る。
中古住宅として次の人に渡す。
そのとき、庭も一緒についていきます。
当たり前のことですが、これまで外構工事では、あまり意識されてこなかった部分かもしれません。
家の価格。
土地の広さ。
建物の状態。
駅からの距離。
道路付け。
そうした情報に比べると、
「この庭には何が残っているのか」
は見えにくい。
でも、実際に暮らし始めてみると、
朝、窓から見える木。
夏にできる木陰。
子どもが遊べる平らな場所。
車を停めやすい動線。
庭に出られる場所。
外で過ごせる場所。
こうしたものが暮らしをつくります。
庭は、土地についている「余白」ではなく、その土地で暮らすための一部です。
庭の価値は、施工金額だけでは測れない
新しく10万円の植木を植えたから価値が10万円。
100万円の外構工事をしたから価値が100万円。
そんな単純なものでもありません。
何十年も育った木。
長く使われてきたアプローチ。
家と庭をつないできた縁側。
そこで過ごしてきた家族の記憶。
そうしたものは、見積書には簡単に書けません。
だからこそ、庭の価値を考えるときには、
「いくらかかったか」だけではなく、「何が残っているか」
を見る必要があるのだと思います。
庭時間は、持ち主が変わっても続いていく
これまで、このシリーズでは「庭時間」という言葉を使ってきました。
子どもと遊ぶ時間。
家族で食事をする時間。
何もしない時間。
庭を手入れする時間。
車を楽しむ時間。
愛犬と過ごす時間。
災害から暮らしを守る時間。
そして、庭を整理する時間。
ここまで考えてくると、庭時間は「自分の家族だけのもの」ではないのかもしれません。
前の住人が過ごした庭時間があり、
次の住人が新しい庭時間を始める。
庭そのものは変わっても、
その場所が誰かの暮らしを受け止め続ける。
それもまた、庭の役割なのだと思います。
庭を次の人へ渡す。
それは、庭をそのまま残すことではありません。
その庭が持っている良さを見つけて、
必要なところを直して、
新しい暮らしに合わせて、
もう一度使えるようにする。
それは、庭を「再利用する」というより、
庭に積み重なったものを、次の暮らしへつなぐこと。
ローカルガーデンが考える庭時間は、完成した庭を守り続ける話だけではありません。
庭が変わり、住む人が変わり、家の使われ方が変わっても、
その土地で新しい暮らしが始まっていく。
そんな庭のあり方も、これから考えていきたいと思います。
これから外構を考える方向けに、実際の施工事例や考え方もまとめています。こちらも参考にしてみてください。
次回予告
次は、もう少し視野を広げてみます。
人が住まなくなった家。
管理されなくなった庭。
空き家になった住宅。
でも、その庭にはまだ木があり、土があり、空間があります。
「空き家と庭。誰も住まなくなった後の庭時間」
庭は、人がいなくなった瞬間に価値を失うのでしょうか。
次回は、庭と空き家、そして地域との関係を考えてみます。
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住所 : 群馬県前橋市上大島町48-16
電話番号 : 027-226-1040
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