庭じまいも、庭時間。暮らしの変化から考えるこれからの庭
2026/09/21
庭を小さくすること。
植木を減らすこと。
使わなくなった庭の一部をなくすこと。
それは、庭を諦めることなのでしょうか。
私は、そうは思いません。
庭じまいも、庭時間です。
庭は、ずっと同じ大きさで、ずっと同じ使い方をしなければならないものではありません。
家族が増えれば広い庭が必要になることもある。
子どもが巣立てば、広すぎる庭になることもある。
年齢を重ねれば、手入れの負担が大きくなることもある。
そして、そもそも「この家にこれからも住み続ける」という前提自体が、昔ほど当たり前ではなくなっているのかもしれません。
だから今、庭についても、
「つくる」だけではなく「減らす」「残す」「引き継ぐ」
という考え方が必要になってきています。
「実家じまい」が珍しくなくなった
最近、「実家じまい」という言葉をニュースなどで見かけるようになりました。
親が住んでいた家をどうするのか。
相続した家をどうするのか。
空き家になる前にどう整理するのか。
家財をどうするのか。
売却するのか、解体するのか、誰かが住むのか。
国土交通省も、実家の相続や親の施設入居などを空き家発生のきっかけとして挙げています。使用目的のない空き家は、平成15年の約212万戸から令和5年には約386万戸へ増加しています。
「実家が空き家になる」という問題は、建物だけの問題ではありません。
そこには必ず、
庭があります。
大きくなった木。
昔つくった花壇。
使わなくなった物置。
古いブロック塀。
何十年も使ってきたアプローチ。
子どもが小さい頃に遊んだ場所。
実家をどうするかという話の中には、庭をどうするかという話も含まれています。
「帰省」という言葉も、少しずつ変わるのかもしれない
昔は、
「実家に帰る」
という言葉に、かなり強い意味があったのではないでしょうか。
盆と正月には帰省する。
親の家に戻る。
墓参りをする。
地域の行事に参加する。
先祖代々の土地を守る。
家を継ぐ。
墓を守る。
そうした「土地と家族が結びついた暮らし」が、かつては今より強かったのだと思います。
一方で、現在は仕事や進学、結婚、住みやすさなどによって住む場所を選び、人生の途中で地域を移動することも珍しくありません。
国立社会保障・人口問題研究所の人口移動調査も、1976年から継続的に行われています。つまり、日本では少なくとも半世紀にわたって、人がどこからどこへ移り住むのかを調べ続ける必要があるほど、人口移動は社会を考える重要なテーマになっています。
「生まれた土地で暮らし続ける」
ことだけが人生ではなくなった。
これは、良い悪いという話ではありません。
時代が変わったということです。
そして、そう考えると、
土地もまた、「一生守り続けるもの」から「必要な人へ渡っていくもの」へ変わっていくのかもしれません。
「庭を持たない親」と「庭を知らない子」
ここも、これからの庭を考える上で面白いところです。
戦後、日本では集合住宅や団地が大量に整備されました。
UR都市機構の資料を見ると、昭和40年代だけで32万戸を超える団地が建設されています。現在もURは、古くなった団地を壊して終わりにするのではなく、建替え、集約、改修などによってストックを再生しています。
もちろん、集合住宅に暮らしたから庭を知らない、という単純な話ではありません。
ただ、
「庭のある一戸建てで育った親」
「集合住宅で暮らした経験が長い親」
「その子どもたち」
では、住まいに対する感覚が違っていても不思議ではありません。
庭は、最初から「持っているもの」ではなく、
必要になったらつくるもの。
あるいは、
なくても生活できるもの。
そういう存在になってきたとも考えられます。
だからこれからは、
「庭のある家を次の世代がそのまま引き継ぐ」
ということだけを前提にしてはいけないのかもしれません。
庭も「家族のもの」から「次の人のもの」へ
例えば、親が大切に育てた庭。
立派な庭木があります。
大きな石があります。
長年かけてつくった植栽があります。
親にとっては大切な庭です。
でも、子ども世代にとっては、
「この木を誰が剪定するの?」
「庭の手入れをする時間がない」
「遠くに住んでいるから管理できない」
ということになるかもしれません。
これは、親世代が間違っていたわけでも、子ども世代が冷たいわけでもありません。
暮らし方が変わっただけです。
だからこそ、庭も変えていい。
大きな木を整理する。
植栽を減らす。
管理しやすい場所にする。
使わなくなった部分を駐車場にする。
逆に、残したい木だけを残す。
家を売却するのであれば、次の人が使いやすい庭にする。
庭を「自分たちだけの完成品」と考えなければ、違う答えが見えてきます。
庭じまいは「全部なくす」ことではない
庭じまいというと、
「木を全部伐採する」
「庭を全部コンクリートにする」
「物置を撤去する」
といったイメージを持つかもしれません。
もちろん、それが必要な場合もあります。
しかし、庭じまいにも「残す」という選択があります。
一本だけ残す。
小さな植栽スペースだけ残す。
ベンチを残す。
縁側のような場所を残す。
思い出の木を残す。
庭の景色を残す。
すべてを維持するのではなく、
残したい時間だけを残す。
そんな庭じまいがあってもいいと思います。
「管理できる庭」から「管理しなくても困らない庭」へ
前回の記事では、
「メンテナンスフリーではなく、メンテナンスできる庭」
という話をしました。
でも、さらに年齢を重ねれば、
「そもそも庭の手入れをする人がいなくなる」
という段階もあります。
ここは現実として考えておく必要があります。
若い頃には楽しかった草むしりも、年齢を重ねれば負担になる。
剪定できていた木も、高くなれば危険になる。
広い芝生も、管理する人がいなければ負担になる。
だから庭の設計には、
「今できること」だけではなく、「将来できなくなること」
まで考えておく価値があります。
庭を小さくすることは、暮らしを小さくすることではありません。
むしろ、
庭の負担を減らして、庭との時間を残す。
それも庭時間です。
そして、土地は動く
ここから先は、庭だけの話ではありません。
家を売る。
土地を売る。
中古住宅として次の人に渡す。
建物を解体して土地を使う。
賃貸にする。
親から子へ渡す。
あるいは、まったく血縁のない誰かが住む。
土地は、持ち主が変わっていきます。
これまでは「先祖代々の土地」という考え方が強かった地域でも、これからは土地の売買や住み替えが今以上に当たり前になっていく可能性があります。
だからこそ、
「自分たちのためにつくった庭」だけではなく、「次の人にも使える庭」
という考え方が重要になってくるのではないでしょうか。
例えば、家を売るとき。
何十万円もかけて全部撤去して更地のような外構にするよりも、
既存の駐車場を活かす。
使える植栽を整理する。
動線を整える。
古くなった部分だけ直す。
庭を使いやすくする。
そんな方法のほうが、次に住む人にとって価値があるかもしれません。
庭を壊して価値をゼロに戻すのではなく、庭を編集して次の暮らしにつなぐ。
これは、これからの外構工事にも必要な視点になると思います。
庭は「所有物」ではなく、「時間の器」なのかもしれない
ここまで庭時間について、いろいろな話をしてきました。
子どもと遊ぶ。
家族で食事をする。
椅子に座る。
植物を見る。
雨を眺める。
庭を手入れする。
車をいじる。
犬と過ごす。
そして、災害から暮らしを守る。
庭には、いろいろな時間があります。
でも、その時間は永遠ではありません。
子どもは大きくなる。
家族構成は変わる。
車も変わる。
犬も歳を取る。
住む人が変わることもある。
そして、庭そのものも変わります。
だからこそ、
庭を永遠に同じ状態にする必要はない。
庭は、その時々の暮らしに合わせて変わっていい。
大きくしてもいい。
小さくしてもいい。
残してもいい。
壊してもいい。
次の人へ渡してもいい。
その時、その場所で必要な時間を受け止められるなら、それも庭なのだと思います。
庭じまいは、庭の終わりではない
庭じまいという言葉には、少し寂しさがあります。
でも、
庭を小さくしたから終わり。
木を減らしたから終わり。
実家を手放したから終わり。
そうではありません。
その庭で過ごした時間は消えません。
そして、その土地には次の時間が始まるかもしれません。
親が育てた庭を整理して、子どもが暮らす。
子どもが手放した家に、別の家族が住む。
古い庭を一度整理して、新しい家族が新しい庭時間を始める。
そう考えると、
庭じまいは「終わり」ではなく、「庭時間のバトンタッチ」
なのかもしれません。
これからの庭づくりは、つくることだけを考えるのではなく、
「いつまで使うのか」
「どう変わるのか」
「誰が使うのか」
「最後はどうするのか」
まで考える時代になっていくのだと思います。
ローカルガーデンが考える「庭時間」は、庭を立派に所有するための考え方ではありません。
その土地で、どんな時間を過ごすのか。
そして、
その時間が終わったあと、その場所をどう次の時間へ渡すのか。
そこまで含めて、庭時間なのだと思います。
これから外構を考える方向けに、実際の施工事例や考え方もまとめています。こちらも参考にしてみてください。
次回予告
庭を整理した。
家も整理した。
でも、その土地にはまだ「庭」が残っている。
次にその家を買う人は、その庭をどう使うのでしょうか。
そして、空き家になった家の庭は、地域にとってどんな存在になるのでしょうか。
次回は、「次の人へ渡せる庭。中古住宅と庭時間」。
「庭をつくる」という話から、少しだけ「庭を引き継ぐ」という話へ進んでみます。
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