暮らしの時間を奪われないための外構。庭時間から考える防災
2026/09/05
外構で防災を考えるとき、私たちはつい「何を備えるか」を考えます。
防災用品を置く。
非常用電源を用意する。
丈夫なフェンスを選ぶ。
水を排水する。
もちろん、どれも大切なことです。
でも、庭時間を考えてきたローカルガーデンでは、もう一つ違う視点から防災を考えてみたいと思っています。
災害から守りたいのは、家や車だけではありません。
そこに暮らす人の「時間」も守りたい。
災害によって失われるのは、建物や物だけではありません。
水が入れば、片付ける時間が必要になります。
車が動かせなければ、生活の移動に時間がかかります。
庭やアプローチが使えなくなれば、日常の動線そのものが変わります。
だから外構にも、
「暮らしの時間を奪われないための設計」
という考え方があっていいのではないでしょうか。
防災を「モノ」ではなく「時間」から考える
住宅では、「災害に強い家」という考え方があります。
耐震性や耐風性、浸水への対策など、住宅そのものの性能を高めることはとても重要です。
では、その家の外側はどうでしょう。
道路から敷地に入るまで。
駐車場から玄関まで。
庭から家まで。
隣地との境界。
雨水が流れる場所。
車を置く場所。
実は、家の周りにも暮らしを守るために考えられることがたくさんあります。
外構は、災害が起きたときだけ使う「防災設備」ではありません。
毎日使っている庭や駐車場、アプローチそのものが、災害時にも役割を持つ。
そんな考え方です。
雨を「追い出す」だけが外構ではない
外構計画で特に考えておきたいのが「水」です。
雨が降れば、水は高いところから低いところへ流れます。
当然のことですが、敷地の中では、
「どこから水が入ってくるのか」
「どこを通って流れるのか」
「どこに集まるのか」
「どこから敷地の外へ出すのか」
を考えておく必要があります。
ここで大切なのは、単純に
「水を全部、敷地の外へ出せばいい」
と考えないこと。
もちろん排水は必要です。
しかし、雨の量が多くなれば、周囲の道路や側溝、排水施設にも限界があります。
だからこそ、敷地の中でも水の動きを考える。
植栽スペース。
土の部分。
透水性を持たせた舗装。
雨水桝や排水設備。
敷地内の勾配。
水が集まりやすい場所。
こうしたものを組み合わせながら、敷地そのものを一つの「水の器」として考える。
ローカルガーデンでは、こうした考え方を**「場内治水」**という言葉で捉えています。
「場内治水」は、特別な防災設備ではない
場内治水というと、何か特別な設備を想像するかもしれません。
でも、必ずしもそうではありません。
例えば、普段は植栽を楽しむ場所が、雨のときには水を受け止める場所になる。
普段は庭として使っている場所が、雨水を一時的に受ける。
普段は歩きやすいアプローチが、適切な勾配によって家の方向へ水を流さない。
普段は車を停めるだけの駐車場も、どこへ水を逃がすかを考えてつくる。
つまり、
普段の暮らしのためにつくった外構が、結果として災害時にも役に立つ。
これが、私たちが考える「庭時間と防災」の接点です。
「全部コンクリート」は悪いのか?
ここは少し誤解してほしくないところです。
群馬で暮らしていると、駐車場をコンクリートにすることには大きなメリットがあります。
雑草が生えにくい。
泥が上がりにくい。
車の乗り降りがしやすい。
掃除がしやすい。
日常の車移動が楽になる。
特に車を使う生活では、コンクリート舗装は非常に合理的です。
問題なのは、コンクリートそのものではありません。
「とりあえず全部コンクリートにしておけばいい」と、敷地全体の水の動きを考えないこと。
庭をつくる場所。
車を使う場所。
人が歩く場所。
雨を受ける場所。
水を流す場所。
それぞれに役割を持たせる。
外構は、すべてを一つの材料で埋めることではなく、土地の中に役割をつくることでもあります。
車を守ることも、暮らしを守ること
群馬の暮らしでは、車も大切な生活インフラの一つです。
通勤。
買い物。
子どもの送迎。
病院。
仕事。
車が使えないことで、生活そのものに大きな影響が出ることがあります。
だからカーポートやガレージを考えるときも、
「車を雨から守る」
だけではなく、
「災害時にも車を使いやすい場所に置いておく」
という視点を持つ。
道路からの出入り。
敷地内の勾配。
水の流れ。
カーポートの位置。
物置や収納との関係。
玄関までの動線。
こうしたものを一緒に考えることで、普段の使いやすさと、もしものときの使いやすさを両立できる可能性があります。
これは「防災用のガレージ」をつくるという話ではありません。
いつものガレージライフが、もしものときにも役立つ。
それも一つの「庭時間」だと思うのです。
「防災のための庭」ではなく「普段から使う庭」
防災を意識すると、どうしても特別な設備を追加したくなります。
しかし、庭時間の考え方では逆です。
できるだけ、
普段から使っているものが、もしものときにも役に立つ。
そんな庭を考えたい。
子どもが普段遊んでいる庭。
家族が座っているテラス。
愛犬と過ごす場所。
車を停めるガレージ。
雨の日に濡れずに移動できる屋根。
庭仕事に使う水栓。
夜の時間をつくる照明。
これらはすべて、日常のためのものです。
でも、災害時には別の役割を持つことがあります。
だから防災を「非常時だけのもの」にしない。
毎日の暮らしを豊かにすることと、もしものときに暮らしを守ること。
この二つは、両立できるはずです。
災害から守りたいのは「家族の時間」
例えば、大雨のあとに庭へ大量の水が入り、泥をかき出すことになったとします。
そこには、
「泥が入った」
という物理的な被害だけではありません。
泥を掃除する時間。
車を動かす時間。
業者を探す時間。
修理を待つ時間。
生活動線を変更する時間。
そして、その間に本来なら家族と過ごしていたはずの時間があります。
災害によって奪われるのは、財産だけではありません。
暮らしの時間そのものが奪われる。
だから外構を考えるとき、
「この材料は災害に強いですか?」
だけではなく、
「この外構は、災害が起きたときに暮らしの時間をどれだけ守れるだろう?」
という問いを持ってみる。
これが、私たちが「庭時間」から防災を考える理由です。
外構は、家と街のあいだにある
庭は、家の中だけでもありません。
道路と家のあいだにあります。
隣の家とのあいだにあります。
雨が降れば、周囲の土地から水が流れてくることもあります。
風が吹けば、植栽やフェンスが影響を受けます。
地震が起きれば、ブロック塀などの安全性も問われます。
つまり外構は、
「家の外にある飾り」ではなく、家と街のあいだにあるインフラの一部
でもあります。
だからこそ、デザインだけでも、設備だけでも足りない。
暮らし、土地、雨、風、車、人、植物。
それらを一つの外部空間として考える必要があります。
庭時間は「楽しむ時間」だけではない
これまで、このシリーズでは庭時間を、
「没頭する時間」
「余白の時間」
「整う時間」
という三つの視点から考えてきました。
子どもと遊ぶ。
愛犬と過ごす。
ガレージで好きなことをする。
何もせず、風を感じる。
水やりをして、庭を整える。
そして今回、もう一つの視点が加わります。
「守る時間」
災害によって奪われる時間を減らす。
家族の暮らしを守る。
車を守る。
家へ続く動線を守る。
雨を受け止める場所をつくる。
普段の庭を、もしものときにも機能する場所にする。
これもまた、庭時間の設計なのではないでしょうか。
「楽しむ庭」から「暮らしを守る庭」へ
外構は、完成した瞬間がゴールではありません。
そこで家族が過ごし、
庭を使い、
植物を育て、
車を停め、
子どもが成長し、
愛犬との暮らしが変わり、
そして、ときには激しい雨や風にもさらされる。
そのすべてを含めて「庭」です。
だから私たちは、
庭をきれいにつくることだけではなく、庭で過ごす時間をつくること。
そしてこれからは、
その時間を、災害からも守ること。
そこまで含めて「庭時間をデザインする」と考えていきたいと思います。
災害を完全になくすことはできません。
でも、災害によって奪われる時間を少しでも減らすために、外構から考えられることはあります。
それは、特別な防災設備を売ることではありません。
毎日使う庭そのものを、暮らしを守る場所として設計すること。
それが、ローカルガーデンが考える「暮らしの時間を奪われないための外構」です。
次回予告
次回は、今回の話をさらに具体的に。
「雨を味方にする庭。家を守る水の境界線」
をテーマに、敷地に降った雨が「どこから来て、どこへ行くのか」を考えてみます。
雨をただ排水するのではなく、
庭で受け止め、
流れをコントロールし、
暮らしを守る。
「雨の日だからこそ分かる外構設計」の話です。
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株式会社ローカルガーデン
住所 : 群馬県前橋市上大島町48-16
電話番号 : 027-226-1040
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